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質問に答えて (働き出してからの調子の波とのつきあい方)

 今回は、前回の記事にコメントで頂いた質問に答えて、書いてみようと思います。
 お返事を書くにあたり、長くなりそうなこと、そして、体調が回復しだしてからの波とのつきあい方は、鬱からの回復過程ではおそらく誰もが経験するであろう課題であり、また、SIMTの講習期間である10ヶ月間以降になってから問題になることも多く、困っている人も多いのではないかな-と思い、新たなテーマとして取り上げてここに書かせていただきました。

 基本的な対処方法としては、SIMTの課題の中でやってきたことと変わりない方法で良いとは思うのですが、実際の所は、調子の波に対する方法といっても、かなり個人的な要素が大きくなり、例えば、その人がどんなリズムで生活をされているのか、実践の期間、現在のマインドフルネスの身につき方などで具体的な対処の内容はかなり変わってくると思います。
 
 なので、いただいた質問と、僕が存じている状況、それについてのあくまで僕の個人的経験から言えることに限られてしまいますが、今回、書いていってみようと思います。

 よかったらおつきあいください。

 ご質問下さった方は、1年8ヶ月ほど実践を続けられ、現在はバイトも週4日できており、かなり回復期に入ったている段階だと思います。そんな中で、いわゆる症状の波を経験されており、今回、質問を頂いているといった感じです。

 以下、質問内容、抜粋です。

 > SIMTを始めて1年と8ヶ月が経ち、始めたころに比べれば身体症状もかなり良くなり、またネガティブ思考の頻度やその強さも軽減してるように思います。
> ただ考えたり動けるようになった分、将来や就職についの焦りと現状でいることへの罪悪感(こんな歳にもなって情けない、周りは一人前に生活しているのに)を感じ、思考をめぐらせてしまうことが多くなりました(これも鬱の症状なのかもしれませんが)。
> ただまだ寝起きの不安、動悸、また意欲が沸かない、人の言動に敏感、嫌なこと、仕事に関することを見聞きすると調子を崩すといった症状があり(これも昔に比べればかなり良くなったのですが)、大きなアクションをするのは怖い、自信がないという状態です。ちなみに現状は週4日ほどアルバイトをしています。
> そこでko7さんにお聞きしたいのは、症状の波がある状態で普通の生活に戻らなくてはという焦りや罪悪感とどのように付き合っていったら良いかという点です。もちろん人それぞれなのでしょうが、参考にしたいのでko7さんの経験をお聞かせ下さい。
> お暇な時でけっこうですので、よろしくお願い致します。


 僕も同様の時期はありました。もちろん全く一緒ではありませんし、今も、同じような不安や焦り、そして体調の波がないわけではありませんが、以前ほどではなくなってきています。
 やはり、一度でも、鬱になり休職したり退職したりしていると、回復してきたとは言っても、仕事に復帰していく過程では、過去のつらい経験がありますから、かなり不安や緊張が高まります。だれでもできるような事をやると言っても、本人にとっては、仕事を復帰する、社会に復帰するということ自体がかなりのストレス経験なわけです。
 
 また、「動けるようになるにしたがって、様々な思考を巡らせてしまう」というのも、自然な経過のように思います。体調が本当に悪いとき、日常生活も困難なレベルの時には、身体も動かない、もちろん、頭も思考もまったく働かないわけです。頭の中には自分を責める思考や記憶が渦巻いて、それ以外のことは考えられません。脳の前頭前野の働きがストップしているわけです。
 でも、体調が回復してきて、考えたり作業をしたりすることができるようになると、結果、仕事も再開できるわけですが、それはつまり、いろんな思考を巡らすことが可能になってくるわけです。
 そうすると、今まで考えることすらなかった将来のこと、気づかなかった周りの状況、などいろいろなことが目に入り、想像して、不安や焦りが渦巻いてくるわけです。
 だから、これは、脳の機能が回復してきている兆候でもあるわけですが、ここでその使い方をうまくやらないと、この波に飲み込まれて、また体調を崩してしまう結果となってしまいます。
 鬱で苦しんだ経験のある人は、頭の中の神経回路自体が、様々な経験や体験をネガティブな思考や感情へとつなげる回路としてできあがっています。だから、頭が働き出す=ネガティブな思考もまわりやすい状態になっている、と考えられるわけです。
 おそらくこれが、鬱の回復期に、再発が多い理由かなと思います。

 だから、ネガティブな思考や、不安、焦り、こういったものが、仕事をし始めるくらいになると、良くあらわれてくるというのは、自然なことなのです。
 では、どうやってそれらとつきあって行けば良いかと言うことですが、基本的には、そういったものも「思考、評価」なので、早めに気づき、名前をつけ、注意作用を呼吸や目の前の活動、身体の感覚などにむけて、それ以上、ふくらませないといったことが中心になります。

 実は、この不安、焦り、罪悪感、といったものには、すべて「評価」が入っています。それも、自分の「独善的な評価」というものです。
 なので、それを思考のレベルでいろいろ考えて処理しよう、なくそうと思っても、消してうまくいきません。だから、できることは、「あ、今、評価したな」と気がついて、それまでその思考に使っていた意識を、「今、ここ」の活動にむけることが大切です。
 ここで、この「評価した」時点で、気分が落ち込んだり、どきどきしたり、身体の反応がすでに出ていると思いますが、それはすぐに消すことができないので、「身体反応、症状がでているな」と名前をつけて確認して、「今、ここ」に意識をむけつつ、呼吸法などで、落ち着いてくるまでやりすごすということになります。

 つまり、SIMTの実践の課題である瞑想や日中の洞察としてやっていたことを、実際の生活の場面で生じることに、どんどん使って行くということが、ポイントになります。
 ここでは、SIMTのセッションの後半でやった、「本音(ぼくは評価基準と言ったりしてますが)に気づく」そして、それについて、自分なりの課題を挙げて、それに対しての具体的な対処方法を挙げて試していく、という部分を、繰り返し繰り返しやっていくということになります。

 ちなみに、厳密に言えば、「評価」といっても、仕事や生活の場面では、起こってきたこと、自分の状態を「評価し、判断して」いくのは、必要なことです。そうでなければ、行動できません。

 では、何が、必要な「評価・判断」で、何が『独善的な評価・判断』なのか。
 僕が経験したところでは、瞬間的に、身体感覚や感情に変化が起こった場合は、それには「独善的な評価」といったものが、かならず入っているように思います。
 だから、不安になったり、焦りを感じたり、身体が重くなる、どきどきする、暗い気分になる、結果的にこういう反応が出たときにしている「思考」には、そこにかならず「独善的な評価」が入っているように思います。
 一方、そういったものが起こってこない評価や判断は、「観察、洞察」に近いもののように思います。
 例えていうと、観察日記みたいなものです。
 例えば、朝顔の観察をするとき、「今日の時点で、00cmの高さになった」とか「薄紫色のつぼみがこれくらい大きくなった」というのは、ただの観察であり、独善的な評価ではありません。
 そこに、「まだ00cmしかのびてない」とか「もう、こんなに大きくなった」とかいうのは、観察というより、そこに個人的な「評価」がかなり入っていますよね。

 なので、自分に起こってくる様々な現象や、今の自分の状態に対して、このただの「観察・洞察」という観点から、評価、判断をしていき、ただ、それだけを行なって、あとは「今、ここ」の呼吸や活動に意識を向けて行くことが大切です。そして、その結果変化して行った状態にも、ただただ、「観察・洞察」をしていくという。
 
 ただし、正直なところ、少し仕事をしただけで、自分に強い疲労感がでたりすると、「こんな仕事しかしていないのに」とか、考えて評価していがっかりしてしまうのは、もうしょうがないことです。
 このような評価を無理に止めるのは不可能ですし、そんな評価した自分を「また評価してしまってダメだ」とすること自体、あらたな評価になってしまうわけです。
 大切なのは、この評価してしまう自分、そして、今、それくらいのことしかできない自分の状態に対しても、「今、自分は、このような評価をした」とか、「今の回復状態はこのレベルなのだ」とか、できるだけ客観的な「観察・洞察」をしてあげて、あとは、それ以上、思考をふくらめないことが大切です。評価してしまう自分自身をも、「そのまま」にして扱うということですね。
 
 そういう事を繰り返して行くと、「こういう評価が今日は繰り返しでているな」「これは、疲労が出てきているサインだ」と、そこから自分自身の体調を把握するヒントを得ることもできるようになってきます。
 また、「こういう状況の後は、すぐに疲労がでるな」とか、「この仕事の時は、そこまで評価や思考をめぐらせず行えるな」とか、自分自身の今の状態、そして特徴を、知っていくおおきな手がかりになります。

 だから、波が出てきている現状は、自分の特徴をしるチャンスのなのです。
 そして、この特徴をいろいろつかんで、それに対しての対処方法もいろいろ選択肢をもっていけるようになると、より調子を崩しにくくなっていきます。
 ただ、この自分自身の特徴、つまり、どんなときに、自分はどんな状態になるのか、どんな反応がでるのか、といったことは、各々の個人によってかなり幅がありますし、そしてそれに対する対処法としては、どんな方法を今の生活の中で使うことができ、どのような効果があるのかも、それぞれの状況で大きく違うので、ここの部分が、自分で特徴をつかんでいき、自分で対処方法を試していくということが大切な理由になります。

 生きている以上、調子の波自体はなくなるわけではありませんが、こういった特徴がつかめるようになってくると、上がり下がりの幅は、かなり少なくなっていくようになると思います。

 これが僕が考える、調子の波や、それに対しての焦りや不安に対処していく方法ですが、もう一つ、こういった状況の中で、僕が悩んだ事としては、そういった波の中で、どれくらいのペースで仕事や活動の幅を広げていくか、といったことです。
 焦って広げれば、また体調を崩し、ダウンしてしまいます。かといって現状にとどまっては、いつまでたっても状況は好転しないように感じます。

 それについて書いて見ると、
 僕の経験では、自分の中に焦り、不安、迷い、があるうちは、無理に活動を広げない方が良く、今、できている実践を大切にして、それを丁寧にやっていった方が良いと考えています。細かい手法の変化や対処法の試しは色々やってみていいと思いますが、仕事を増やすとか、環境や生活のリズムを大きく変えることは無理してやらない方がいいということです。

 なぜなら、自分の中に迷いがあるという時は、すでに頭の中で、「こうした方が良いはずだ、こうするべきだ!」と思いながら、身体や感情部分では「でも、それは無理かも」という状態のわけです。
 鬱になる人の特徴として、ついつい頭の中で勝手にゴールや基準を設定して、それに自分を合わせようとしてしまうということがあります(これは僕だけの特徴かもしれませんが)。
 なので、回復へ大切なことは、今、自分の体調、現状を、頭の独善的な評価をせずに、率直に受け止め判断することです。
 この率直に受け止めるということに関しては、身体感覚の方が、正直にそれを反映しているように思います。だから、そういうときは、身体の反応に素直に従って上げた方が良いかなと思います。
 これも、「今は、この程度疲れているな」とか、「今日のやる気は00%程度だな」など、観察をして、それに併せてその日の行動をとっていくということです。このときに、「こんなに疲れてしまっている」とか「今日のやる気は00%しかないよ」という思考は、独善的な評価が入ってしまっています。あくまで「観察・洞察」に徹していくということです。
 
 もし、やれるタイミングがくるとするなら、その時は、頭の部分でも、「やれるはずだ」となっており、身体も「やってみたい」となっているので、すでに自分の中に相反するものがなくなっていますから、その時は、「頭で考えるより先に、もうそのことを実践している」という状態になってきます。迷う必要がなくなるような。タイミングが来れば、スッと自然に一歩を踏み出してしまいます。

 だから、迷いや焦りを感じるうちは、すぐには動かず、今の事を丁寧にしていく、それを続けていく。そして、そうしていることで、機が熟せば、自然と物事は動いていくように感じています。
 この辺の判断は、いくらやっても難しいところではありますが、上記の「観察・洞察」を丁寧に続けていくと、自分の中の「焦り」や「迷い」の存在にも鋭敏になってくるので、見極めがしやすくなるように思います。

 あと、仕事を始めるようになってから、難しくなってくるのが、基本的な瞑想や洞察をする時間を確保することです。

 ただ、僕自身の経験から言えることは、やはり、日々、時間をとって静かに瞑想しながらやる洞察や呼吸法などは、それがなくなってしまうと、どうしても、上記で書いた、日常の生活の中での「観察・洞察」をするための意識のアンテナのようなものの感度自体が鈍くなっていってしまうように思います。日常の様々なイベントに飲み込まれて、洞察ができなくなっていってしまいます。

 だから、可能であれば、5分でも10分でも時間をとって、瞑想や基本的な洞察の訓練を作ることをおすすめします。
 それば無理であれば、行き帰りの電車など普段の生活の中で習慣にするでもかまいません。
 ここでも、長時間を確保する必要はなくて、大切なのは、短い時間でも、1回1回の瞑想や洞察を丁寧にやることです。練習の質を高めるという感じでしょうか。これは、僕自身への自戒の意味も込めて書かせていただきます。

 さてさて、つらつらと僕なりの対策法を書き連ねてしまいましたが、質問者さんのお役に立てるかどうか。。。。
 でも、僕自身、そういう波の大変な時期を経験した中で、その波そのものも、一つの「特徴」として、あまり評価をせず、ただ洞察、観察をする感覚を掴めるようになってくると、すごく生活も楽になってきて、そのうち、波自体も自然と収まってきました。

 質問者さんが感じるような不安や焦りは、僕ら、鬱の体験者がみんなかならず体験するものなので、ぜひ、そのこと自体には不安にならず、丁寧に実践をお続けになっていただけるといいと思います。
 そうしているうちに、脳も使う機能は使うほど強くなり、使わない物はどんどんなくなっていくので、ネガティブ回路も自然と消失していき、思考の内容自体も、ネガティブなものが少なくなっていきますよ。

 安らぎの時間が少しでも多くなることをお祈りしております。
 
 ではでは、今回も長文、おつきあいありがとうございました。
 またよろしくお願い致します。

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Ko7さん、質問に丁寧に答えて下さって本当にありがとうございます。すごく的を射ている内容で、読むと不安が解消しました。私の質問文は使って頂いて構いません。これからも調子を崩しそうな時はこの記事を見させてもらいます。
これから蒸し暑く、身体に堪える季節になりますが、ko7さんもお気をつけて。

Re: タイトルなし

Kenjiさん、喜んでいただけて良かったです。
本当に調子の波や焦りや不安はつらいですが、Kenjiさんの様子をうかがうと、すごく順調に改善してらっしゃるように感じます。
今、自分がやっていることを信じて、ご自身の道を歩いていってください。
時間はかかるかもしれませんが、着実に前進していけると思います。

また、ぜひ、何がご質問があればコメントしてください。僕自身も大変、勉強になっています。
ではでは、引き続きよろしくお願い致します。

タイムリー

Kenjiさんが質問くださったおかげで、昨日までの私のもやもやの正体がわかりました。ワークを再開し、せっかく良い感じになってきたのに、なぜだかドキドキするのです。 それはまさに、「良くなってきたのだから、もっと頑張らないといけない」という焦りだったのだと気が付きました。Ko7さんのブログは、自分が訳の分からないようになっているときに、どこかに必ず答えが載っています。私のバイブルです。 たとえや表現も、本で読むよりも「しっくり」と私の中に入ってきます。 更新を心から感謝してます。

Re: タイムリー

みどれんじゃーさん、コメントありがとうございます。やはり同様な体験をされている方がいらっしゃるのですね。こうやってコメントしていただけると、僕自身も大変励まされます。きっと質問して下さったKenjiさんも、質問して良かったな、誰かの為に役に立ったんだなと喜んでいらっしゃるのではないかと思います。
 治る過程での焦りはつきものです。良くなってきたからこそ焦るのだとも言えます。この焦りはすぐには消えませんが、じっくりとSIMTを実践するチャンスです。みどれんじゃーさんも、時々いただけるコメントを見ていると、すばらしい実践をされていて、ちゃんとご自身を洞察されているように感じます。ぜひ、その調子でこれからも実践をお続け下さい。またコメントいただけること楽しみにしています。
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Author:Ko7

訪問ありがとうございます。
 

鬱になって苦しんでいたときにマインドフルネスと出会いました。
自分の経験とマインドフルネスを実践する中での気づきなどを徒然なるままに書いていこうと思います。
私にとって先達者の方々のブログが参考になったように、このブログが同様に苦しんでいる方々に少しでも助けになればと願っています。

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